AIエージェントによるWebサイト攻撃が観測される一方、攻撃手法自体は従来の延長線上にあるという。ビットフォレストのWAF開発責任者、佐藤匡氏への取材をもとに、攻撃側のAI活用の特徴と、防御側が取るべき対策を整理する。
AIは新しい攻撃ジャンルを生んでいない
佐藤氏によると、AIによる攻撃もSQLインジェクションやクロスサイトスクリプティングなど、既存の分類に含まれる。AIの強みは新種の攻撃を生み出すことではなく、既知の脆弱性を効率よく探索する点にある。
従来の攻撃ツールが大量のリクエストを反復するのに対し、AIは無駄な試行を見極め、ページを移動しながら探索を続けられる。この効率的な反復により、単純なスキャンでは見つからなかった弱点が発見される可能性が高まっている。
防御側の本命はコード全体の脆弱性チェック
佐藤氏が防御側の有力なAI活用法として挙げるのは、コードベース全体を対象にした脆弱性チェックだ。新機能の差分だけでなく、Webサイトを構成するコード全体をAIに確認させる。
使い方の要点
- Webサイトのコードベース全体をAIの検査対象にする
- 脆弱性の有無を網羅的に確認させる
- 一つのモデルで問題が見つからなくても、別のモデルでも再検査する
- 機能を追加するたびに同じ検査を繰り返す
人による開発では脆弱性の混入を完全には避けにくいが、AIなら一定のコストで繰り返しコードレビューを実施できるという。
ペネトレーションテストにもAIを利用
外部からシステムを調べるブラックボックス型のペネトレーションテストも、AIで実行できる。記事では、クラウド上のクローズドモデルは攻撃に関連する依頼を拒否する場合が多いため、オープンウェイトモデルをローカル環境で動かす方法が適していると説明されている。
ただし、投資余力がある企業には専門ベンダーによる診断が確実だと佐藤氏は述べている。AIによる脆弱性診断を提供するベンダーも登場しているという。
従来のWAFでもAIによる攻撃を防御可能
AIが実行する攻撃は従来と同種であるため、既存のWAFでも防御できる。攻撃が長時間続く場合でも、攻撃元がAIか人間かによって基本的な防御方法が変わるわけではない。
また、AIエージェントと判定した通信を一律に遮断する方法は、中長期的には有効ではないとされる。今後、正規ユーザーがAIエージェント経由でサービスを利用する場面が増える可能性があるためだ。防御側に必要なのは、送信主体の種類ではなく、攻撃に該当する通信を止めることである。
継続的な検査が防御側の優位性につながる
記事で示された事実は、従来から脆弱性診断やセキュアコーディングに投資してきた企業では、AIエージェントによる大量の攻撃を受けてもインシデントが起きていないという佐藤氏の説明だ。一方、被害は未認識の脆弱性を残したままシステムを公開していたケースで多いと同氏はみている。
実務上の整理
- コードレビュー:AIにコードベース全体を検査させる
- 再検査:複数のモデルを使い、見落としを減らす
- 反復:機能追加のたびに脆弱性チェックを行う
- 外部診断:可能であれば専門ベンダーの診断も利用する
- 通信防御:AIかどうかではなく、攻撃行為そのものをWAFで遮断する
見解として整理すると、防御側の優位性はAIを導入するだけで生まれるものではない。コード全体の検査と修正を継続し、脆弱性を残さない運用を構築できるかどうかが重要になる。
出典
ITmedia AI+「長い目で見れば防御側が有利」はなぜ? 守る側のAI活用法、本命は Webセキュリティ専門家に聞く



