MicrosoftがAIエージェント悪用に警告
Microsoftは、中国国家と連携する攻撃グループ「Storm-0940」が、AIを利用する侵入テストフレームワーク「ARTEX」で攻撃を自動化し、世界の数百組織を標的にしていると発表した。
同社は、ConnectWiseのクラウドバックアップサービスを経由したサプライチェーン攻撃についても、Storm-0940によるものと分析している。
ARTEXとは
ARTEXはオープンソースの侵入テストツールで、任意のAIモデルと組み合わせて利用できる。偵察からデータの持ち出しまでの工程を、人間がほとんど関与せずに自動実行できるという。
- 用途:侵入テスト工程の自動化
- 対象工程:偵察からデータ持ち出しまで
- 対応言語:英語、日本語、韓国語、中国語、スペイン語
- 悪用が確認された分野:航空宇宙・防衛、自動車、金融、政府、半導体、ソフトウェア、メディア、シンクタンクなど
記事によると、Storm-0940は2026年9月ごろからARTEXを使い始めた。10月には韓国の金融機関を狙った個人情報漏えいでも、その悪用が報告されている。
AIによって攻撃時間を短縮
Microsoftは、AIエージェントが昼夜や休日を問わず稼働し、複数の侵入経路を並行して試せる点を指摘している。標的の選定後、クラウド環境で管理者級の権限を得るまで3時間未満だった事例も複数あった。
攻撃の大半は失敗した一方、短期間に多数の組織へ侵入し、持続的なアクセス権を確保した例もあったという。
ConnectWise経由の攻撃手法
ConnectWiseの事例では、「ConnectWise Cloud Backup」などのアプリの認証情報が奪われた。攻撃者は、顧客のMicrosoft 365環境で正規アプリに事前付与されていたアクセス権限を悪用し、利用者によるサインインなしで環境へ侵入したとされる。
攻撃者は2250以上の組織のテナントに対し、毎分2900回のペースでサインインを試行した。一部では、組織内の情報収集、アプリへの新しい認証情報の追加、管理者権限の付与が実行された。
追加された認証情報や権限は、元のアプリへの対処後もバックドアとして残る可能性がある。Microsoftによれば、自社システムや製品の脆弱性が悪用された事案ではない。また、侵入の痕跡だけでは、データの閲覧や持ち出しがあったとは断定できない。
日本企業を狙った悪用も確認
GMOサイバーセキュリティ byイエラエは、日本企業を狙う不正アクセスでARTEXの悪用を確認したと発表している。同社が観測した攻撃元は約20社を標的とし、そのうち8社が9月から10月に情報漏えいを公表していたという。
ただし、MicrosoftはARTEXを使う攻撃者が複数地域に存在するとしており、日本で観測された攻撃とStorm-0940の関係は記事内で確認されていない。
Microsoftが推奨する確認と対応
特に確認が必要なのは、ConnectWiseのクラウドバックアップ関連アプリをMicrosoft 365で現在利用している、または過去に利用していた組織だ。
- ConnectWiseから正式な復旧手順が示されるまで、影響を受けたアプリの接続を無効のまま維持する。
- 調査証拠を失わないよう、初動でアプリ自体を削除しない。
- 少なくとも10月15日以降、可能であれば10月1日以降のサインイン記録と監査ログを確認する。
- 身に覚えのない認証情報の追加、権限変更、不審なメールやファイルへのアクセスを調べる。
- 不正を確認した場合は、権限の取り消しと認証情報の更新を行う。
一般的な対策としては、外部アプリに付与する権限を必要最小限にし、強い権限を持つアプリへの認証情報追加や権限変更を継続的に監視することが挙げられている。
事実から読み取れるポイント
事実:ARTEXを用いた攻撃では、標的選定から管理者級権限の取得まで3時間未満だった例があり、複数組織への並行攻撃も確認された。
編集部の見解:今回の事例は、AIエージェントが攻撃工程の速度と規模を拡大し得ることを示す材料といえる。防御側では、初期侵入への対策だけでなく、外部アプリの権限と認証情報の変更を継続的に把握する運用が重要になる。
出典
ITmedia NEWS:中国系攻撃者がAIエージェントで攻撃を自動化、「ConnectWise」のサプライチェーン攻撃に関与



