いえらぶGROUPが新人のAI利用を禁じた背景
不動産向けSaaSを手掛けるいえらぶGROUPは、エンジニア全員にAI開発ツールを配布し、未経験で入社した新人にも利用させていた。しかし、新人が初めて担当した大規模機能のレビューでは、指摘が830件に達した。
問題には、社内の設計ルールに沿わない実装、確認用の不要な処理の残存、動作チェックの仕組みの欠如が含まれていた。新人は、AIが生成した実装を正しいと考えていたという。
同社は、AI出力の妥当性を本人が判断できない段階での利用にはリスクがあると判断し、期間を限定して新人のAI利用を禁止した。
禁止期間に実施した3つの基礎訓練
AIを使わない期間には、次の取り組みを課した。
- 公式ドキュメントを読む:開発で参照すべき一次情報を理解する。
- 既存コードを読む:社内プログラムに共通する実装パターンを見つける。
- 実装方針を言語化する:コードを書く前に、どのように作るかを整理する。
人によるレビューを4段階に分割
教育方法も、完成品を一度に提出させる形式から、段階的にフィードバックする形式へ変更した。
- 設計の骨組み:全体の方向性が社内の開発方法に合っているか確認する。
- 処理の流れ:実装前に日本語のメモとして提出する。
- 内部処理:画面の見た目を後回しにして、処理部分を作る。
- 画面デザイン:最後に表示面を整える。
AIを再び使わせる判断基準
同社は、新人の質問が「どうすればいいですか」から「どちらがいいと思いますか」へ変化した段階を、AI利用を解禁する目安とした。これは、本人が選択肢を考え、比較できる状態になったかを見る基準だった。
3カ月後、新人が開発した機能は合格水準に達した。設計ルールに沿い、動作チェックの仕組みも備え、自分が書いたコードについて質疑応答できるようになったため、AI利用が解禁された。
1年後に確認された変化
記事によれば、この新人は2026年10月時点で商品開発本部の役職者を務めている。AI利用禁止前の約1年半では、他のメンバーのコードに付けたレビューコメントは7件だったが、その後はAIによるレビュー支援を含めて月100件を超え、主に若手のコードを承認する立場になった。
また、AIの提案と自分の実装が異なる理由を説明できるようになったと、同社執行役員は評価している。なお、提示された元記事は全2ページのうち1ページ目であり、現在の教育制度の詳細はこの資料には含まれていない。
事実から整理できる教育設計の要点
ここからは記事中の事例を整理した見方である。同社の施策は、AIを恒久的に排除するものではなく、出力を評価する基礎能力が形成されるまで利用を制限し、その後に解禁する段階的な設計と捉えられる。
また、解禁の判断を経過期間だけで決めず、設計意図や選択肢を本人が説明できるかという行動の変化に結び付けている点が特徴である。ただし、これは記事で紹介された一企業・一新人の事例であり、他の組織でも同じ成果が得られるとは記事から判断できない。



